「流星屋」の災難

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 彼がその立場に着いたのは今から2年前になるが、俺が彼の一人息子であることは公然の秘密というヤツだ。とは言え、俺が6才の時に米軍の戦闘機が全て無人機にリプレイスされ、親父が横須賀から本土に戻ってからは、俺とはずっと離れ離れに暮らしている。  その当時、お袋はお袋で日本で仕事があったし、俺も日本生まれの日本育ちだったから、あまりアメリカに行きたくはなかった。既にその時点で「リチャード・コバヤシ・マクドネル」って本名よりも、「小林 (りく)」っていう日本名の方が、俺にはずっと馴染んでしまっていたのだ。  まあでも、別にそれで親父とお袋は離婚したわけでもなく、ヴァーチャルワールドでよく親子三人で会っていたし、俺もその時親父にさんざん遊んでもらったので、離れていても全然さみしくはなかった、というのが実情だ。だけど俺も成長してから知ったのだが、実はあの頃親父は日本との13時間の時差を埋めるために、かなり無理をしていたらしい。だから俺は今でも親父が好きだし、とても尊敬している。  そんな親父の60回目のバースディが、1か月後にやってくる。
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