「流星屋」の災難

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 と言っても、親父の希望で、親族やごく少数の関係者だけが集まる、こじんまりとしたパーティーが開催される予定だ。だが俺は、あえてそれに参加しない。その代わり、パーティ会場である親父の実家があるペンシルバニア上空に、大きく流星アートを描く。それが親父に約束した、俺のバースディプレゼントなのだ。 ---  実は今回のプロジェクトには、準備に結構な時間と金がかかっている。  今回、親父へのプレゼントとして俺が描くのは、五芒星(ペンタグラム)( ⚝ )。絵面としては至極単純な図形だが、これを描くためには五つの異なる軌道傾斜角(地球の赤道と軌道の交わる角度)の軌道から流星を突入させる必要がある。実はこれはそれほど簡単ではない。なぜか。  衛星の軌道傾斜角を変更するためには、当然だが推進剤が必要になる。しかも単純に軌道を変える方向にベクトルを与えればいい、というものでもない。推進剤を使えばそれだけ速度が増え、軌道の高度が変わってしまうのだ。だからそれを元に戻すためにも推進剤を使わなくてはならない。
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