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「屋台の食いモンはシェアしながら食べるんスから、満腹になる前にやめればいいんス」
「どうせなら色々食べたいし、みんなで食べれば量もないし!」
たしかに……一人一つ一種類で食べるより、違うものをみんなで分けて食べたほうがいいに決まってる。幸い、回し食べや回し飲みを気にするような潔癖な性格でもない。
「あんず飴とかひとり一個ヨユーっしょ? チョコバナナもいちおーフルーツだし?」
「あんず飴なら青い水飴が好き~」
「チョコバナナってオヤツじゃないの?」
「小学校の頃センセーに言われたじゃないっスかー。〝バナナはオヤツにはいりません〟って。つーことは! フルーツなんスよ! 弁当のデザート的な!」
「あれだね、補食的な感じ」
「そうそう!」
「チョコバナナは……補食」
初耳だ──でも、バナナはお菓子と違って栄養価も高いしお腹にも溜まるし……そっか、補食扱い……。
「円くん? どうしたの? 大丈夫?」
「エンちゃん? なにボーッとしてんスか? 早いとこ屋台回って、うみっちのお兄サンがやってる喫茶店行くっスよー」
バナナが補食というキーワードに囚われてすっかり沈黙していたら、左右から二人が覗き込んできた。
「ごめんごめん。うん、行こっか」
案内図を頼りに模擬店を回り、各種食べ物を手に入れていく。
焼きそば、たこ焼き、わたあめ、あんず飴、チョコバナナなどなど。
三人で両手いっぱいに食べ物を持って中庭に戻る。
ちょうどテーブルに空きも出てたから食べ物はテーブルに置き、ベンチに腰をおろした。みんなで分けて食べるとは言ったものの、こんなに食べきれるだろうか。
「やっぱ屋台って魔性っスね! ベビーカステラとか反則っしょ!」
「ほんといい匂いだったもんねぇ」
ガサガサと袋の中からたこ焼きだの焼きそばだのを取り出す二人がそんな話をしている。テーブルに置かれた透明のパックからソースの匂いが漂ってきて、腹の虫がクゥ~と鳴いた。
「あはは、円くん、お腹鳴ってる」
「やー、これは鳴るっしょ! オレもー腹ペコっスもん」
「じゃあ、いただきますか」
各自割り箸を持って手を合わせ、「いただきます」と口にした。
ちゃんとしたお店で食べるものより見た目はやや劣るけれど、やっぱり文化祭って雰囲気が勝るのか、どれもそれなりに美味しく感じられた。製作コストを考えれば、温めるだけ、焼くだけがほとんどかもしれないけど、それでも美味しかった。きっと、〝自分たちと歳の変わらない学生が一生懸命作り上げたものだから〟という、何事にも代えがたい付加価値がついているからかもしれない。
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