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プロローグ
秋の夕暮れは早い。みっつぶんの影が、夕日に照らされて長く伸びた。
「楽しかったっスね~! あーオレもはやく高校生になりてぇ~!」
開放感露わに両腕を天へと突き上げて伸ばしながら、陽気な声でそう言ったのはセンちゃんだ。
「うんっ! 中学生になった時も特別感あったけど、高校生ってもっと特別な感じするねぇ……文化祭なんて大掛かりなお祭り、初めてだから興奮しちゃった!」
昼間の情景に想いを馳せているのか、両手を組み合わせうっとりとした声でそんな風に言ったのは、たっくんだ。楽しかったようでなにより。
「まっ、高校生になる前にまずは週明けにある英語の小テストを乗り切るところからだけど」
二人を横目に見ながら、へらっと笑って現実的なことを言えば、二人の表情がピシッと固まった。
なんだろう、すごく嫌な予感がする……。
「「………………」」
これは……ひょっとして、ひょっとする……?
「え、まさか忘れてたとか言うんじゃ……?」
察しはついたけど敢えて尋ねてみる。すると二人がくわっと真剣な眼差しをオレのほうへ向けた。同時にそれぞれから両手を片方ずつガシッと握られる。
「円くんっ!」
「まーくんっ!」
「は、はぃ……」
「「出題範囲、教えてください! よろしくお願いします!!」」
「えぇ……」
必死な二人の〝お願い〟を受けて、オレの口からは思わず気の抜けたような声が漏れた──。
この物語は、高校生生活に想いを馳せたオレたち三人の、友情を描いた物語である──……。
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