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「やっと⋯ここまで来れたか⋯」
空を見上げると、目が眩むほど眩しく輝いておられるお天道様がおられた。
だがそんなお天道様には、今の私の心情は分からないだろう⋯いやお天道様だけじゃない。きっとこの世に存在する全ての者は知らないだろう。
そんな事を思いながら私はお天道様に向かって睨むように目を細めてから顔を元の位置に向けた。
「今日も暑いな」
今頃になって喉が渇いてきやがった。
きょろきょろと辺りを見渡すと右斜め前にある一つの赤い自販機が目に止まった。喉が唾を飲み込む音が聞こえた。すぐに行動に移したい衝動を抑えて右手首にある腕時計を見る。
⋯時間が来るまでまだ数分ある。その間に飲み物を買って飲んだり、自販機の隣でタバコを吸っても誰も文句は言わないだろう。
誰かに了承をもらう必要などあるはずないのに、何気なくそんな事を考えていた。
自販機に近づくと、何処でも見かける黒い炭酸水やお茶、ジュース類などが並んでいた。だが私が買うのはこのお茶だけだ。ポッケから小さな小銭入れを取り出し、銀色の横穴に入れた。あとは簡単、お茶のボタンを押すだけ。
ピッという音と共にガコンッと大きな音が自販機の中に響いた。取り出し口を開けるとお目当のお茶があった。ちゃんと冷たい。
蓋を回すとカチッという音と共に開いた。喉も限界が近づいてきていたため何も考えずそのまま一気にお茶を飲み干した。
「⋯っハァ。やっぱりお茶が一番だな」
お茶が体に染み渡っているのを感じながら、自販機の隣に行き壁に身体を預けた。今度は小銭入れを出したポッケの反対側のポッケからタバコとライターを取り出し、そのタバコに火をつけた。
タバコを吸うと肺に煙が充満する。私はこの感覚が好きではない。だからなるべく早く肺に溜まった煙を吐き出すようにしている。今回のように。
ふぅー⋯⋯
あまりにも小さすぎる音だったため、本当に私が発した音なのか少し疑問を感じてしまった。だが周りには誰もいない。私以外この音を発することができる人は周りにはいない。
しばらくタバコを堪能してから携帯用灰皿に入れた。
腕時計で時間を確認すると残り数秒だった。
何気なく私は秒数を数えた。
⋯4
⋯3
⋯2
⋯1
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