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お前が盗人そのものなんだ
「盗人? この俺が盗人だと?」
「そうだよ。お前が盗人そのものなんだ。薄汚くて卑怯な」
怪盗が金持ちにそう言い放ち、これまでの金持ちの悪行を並べ立てはじめる。
「お前はそもそもカネに汚く、ケチでどうしようもない金持ちじゃないか。この下働きの男にだってささいなミスを見つけたり、どうでもいいようなことに難癖をつけたりして、しまいには怒鳴りつけるだろ?
『誰がお前を雇ってると思ってるんだ! 払った給料分はきっちり働いてもらわないと、クビにしちまうぞ!』ってさ。
ここにいる下働きの男にも毎日のようにそう怒鳴っていたそうじゃないか」
金持ちは下働きの男をにらみつける。下働きの男はその視線におびえるが、もはや金持ちは毒蜘蛛の糸で身動きが取れない。下働きの男は今まで積もり積もった怒りと鬱積を込めた視線を金持ちに向ける。
「そりゃそうだろ。たいした仕事もしないのにカネばかりよこせなんてえらそうな口を聞く奴に払う給料なんてもったいないだろ!」
金持ちは怒りのこもった視線を下働きの男に向ける。
「まだわからんのか!」
毒蜘蛛が叫んだ。
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