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さて、最後の仕事だ
サナギの中から姿を現したのは、一匹のヒキガエルだった。ゲロゲロ、ゲロゲロ。巨大な毒蜘蛛や怪盗、そして下働きの男に何かを訴えるように鳴き声を上げる。
「旦那さまはいったいどこへ……」
下働きの男はそう言いかけて気付く。このヒキガエルが……。
「さて、最後の仕事だ。お前さんも手伝ってくれ」
怪盗が下働きの男に言った。それから怪盗と下働きの男は金庫に入った貨幣や金貨、宝飾品をみんな引きずり出す。
「ほら、手伝ってくれたお礼だ」
貨幣ひと束と小さな袋ひとつに詰め込まれた金貨を、怪盗が下働きの男に手渡す。ゲロゲロ、ゲロゲロ。ヒキガエルが必死で鳴き声を上げるが、もはや手遅れだ。
「じゃあ、俺は残りのカネをみんなに配ってくるとしようか」
巨大な毒蜘蛛がそう言った。
「みんなに配る?」
下働きの男が疑問を口にする。
「そうだ。今までさんざん安い給料でこき使われていた農民や工員に配ってくるんだ。そのせいでみんな貧しい暮らしを送ってるからな」
貨幣や金貨でパンパンに膨らんだ布の袋を担いだ巨大な毒蜘蛛は窓から夜空へと飛び出す。巨大な毒蜘蛛の姿は銀色にパッと輝く。それからすぐに四方八方へと細かな銀色のかけらに砕け散る。銀色のかけらは町のあちこちに散ってゆく。まるで星が降るように。
「あの金持ちにこき使われていた農民や工員の家に、ああやって金庫のカネや宝飾品を配るんだ」
そんな光景に目を奪われていた下働きの男に、怪盗がそう告げた。
「さあ、お前さんも早くここから立ち去れ」
怪盗の言葉に下働きの男は我に返る。怪盗の手にも貨幣と金貨の入った袋。金庫に入っていた貨幣や金貨の量に比べれば、わずかばかりの量だ。
下働きの男は怪盗にお礼を告げると、寝室をそっと抜け出し、自分の部屋へと戻った。まるで何事もなかったかのように。
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