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呪文と儀式
魔女はある人物の名前を悪事を書き連ねた紙を魔法陣の手前に置く。それから魔女は、中身をくり抜かれた腐りかけのカボチャを魔法陣の真ん中に乗せる。
さらに魔女はそっとガラス瓶とナイフを手に取る。毒蜘蛛の詰め込まれた瓶だ。そして慎重にガラス瓶のふたを開けると、ナイフで毒蜘蛛をひと突きにしてしまう。中身をくり抜かれて空洞になったカボチャの中にナイフで突き刺して動かなくなった毒蜘蛛を落とす。毒蜘蛛の体液や毒そのものがべっとりとまとわりついたナイフの刃。赤黒くて不穏で不気味な毒がまとわりついているのだ。
魔女はナイフを魔法陣のかたわらにそっと置く。次にイモリの目玉とカエルの舌、それにひとつかみ分の人を惑わせる薬草もカボチャの中へと放り込む。そして再び怪しげな呪文を唱えはじめる。
「うんにゃらかんにゃら、うんにゃらかんにゃら……」
黒魔術的な呪文が部屋に響く。魔女は呪いの相手の名前を書いた紙を手に取り、燭台の上であかあかと炎を燃やす蝋燭へかざす。紙にはたちまち火が燃え移る。魔女は燃え盛る紙をさっとカボチャの中に放り込む。
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