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呪いをかける時がやって来た
「うんにゃらかんにゃら、うんにゃらかんにゃら……。盗人の罪業が、今宵、地獄の炎に焼き尽くされてしまうよう、ここに盗人の守護神に祈りを捧げます。うんにゃらかんにゃら、うんにゃらかんにゃら……」
夜に向かって開け放たれた窓の向こうには満点の星空。ときおり、流れ星がすっと夜空を流れる。銀色の尾を引きながら。それを合図に、腐りかけたカボチャの中からたちまち煙がもくもくと立ちのぼる。
開け放たれた窓から吹き込む風に炎と煙がかき消されてしまうと、部屋の中に巨大な毒蜘蛛が姿を表した。人間と同じくらいのサイズの毒蜘蛛だ。
八本足の蜘蛛は魔法陣の上に立ち上がる。炎と煙の余韻がまだかすかにあたりに漂っている。窓の向こうに見えるのは星明かりばかり。静寂と薄闇に包まれる部屋。そんな薄闇の中、二本足で立ち上がった毒蜘蛛を見つめ、魔女は満足げに笑う。
「すばらしい。いよいよ盗人に呪いをかける時がやって来た。さあ早く、お行き!」
巨大な毒蜘蛛は窓から星降る夜へと飛び出してゆく。魔女の呪いを成就させるべく。
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