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こんなに溜め込んでやがったのか
ベッドには下品ないびきを立てながらぐっすりと眠り込んだ金持ち。金持ちの眠る寝室はひどく暗い。カーテンのすきまから差し込むわずかな星明かりを手がかりに、怪盗はベッドのそばをそっと忍び足で進み、金庫の前に立つ。人の背丈の半分くらいの高さ。ずっしりとした扉。
「金庫の鍵をくれ」
下働きの男は手を震わせながら怪盗に金庫の鍵を手渡す。怪盗は手慣れた手つきで金庫の鍵をかちゃりと開ける。
「すごいな。こんなに溜め込んでやがったのか。さすが、カネに汚い男だな」
下働きの男も金庫をのぞき込む。うっすらとした星明かりに照らされた金庫の中は暗くてよく見えない。それでも金庫の中の様子が下働きの男の目を惹きつける。積み重なった紙幣、数え切れないほどの金貨、きらきらと輝くを放つ宝飾品。下働きの男は思わず息を飲む。これだけあったら、一生働かなくてすむ……。
「じゃあ、お宝をいただくとするか。急ぐぞ、手伝ってくれ」
怪盗は布の袋を取り出し、金庫の中の紙幣や金貨を詰め込む。下働きの男も布の袋に金庫の中身を詰め込んでゆく。生まれて初めて手にする金貨や宝飾品。
「おい。お前らそこで何してるんだ!」
夢中になって金庫の中身を布の袋に詰め込んでいた怪盗と下働きの男の背後で怒鳴り声が響いた。ビクッと体を震わせて振り返る。そこには棍棒を持って立っている金持ちの姿。
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