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青年はカウンターに頬杖をつき、店内を物憂げに眺めていた。
その頭上から。
近づいてくる何か。
杯。
物思いに耽っていた青年は気づくのが遅れ――。
酒を持ってきた青年が金も受け取らずにボーっと突っ立っている。
「奢ってくれるのか?」
「綺麗だな……」
噛み合わない受け答えを不審に思った男が訝しむ。
青年はエルフの娘の横顔に見惚れていた。
生糸を思わせる長い銀髪。
その合間から憂いを湛えた涼しげな目元が覗く。
石畳の隙間に咲く花のように可憐で凛とした唇から零れる吐息が悩ましい。
白磁のごとき頬をほんのりと染めるのは紅か酒か。
「ああいうのが好みか?」
「……! いや、そういう意味じゃなくて!」
我に返った青年が耳まで赤くしながら言い繕う。
「やめとけ。おまえには高値の花だ」
青年はぎょっとして、ようやく男を見た。
「もしかして美人局なのか?」
「ほう、難しい言葉を知っているな」
男が大袈裟に感心してみせた。
「まあ、恐いお兄さん達がついているのは似ているが」
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