捕食

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捕食

 照明ランプの周りに、蛾が集まっていた。  灰色に白が混じった、くすんだ色の生き物が可愛い。正一は手を伸ばして、口を開いた。 「――ぁ、っ」 「ああ?へばんな」  正一は畳に顔を押し付けられていた。イ草とタバコの匂いが、肺を満たす。布団から転がり落ちた正一は服を剥ぎ取られ、股を畳の上で、大きく拡げていた。 「随分、使い込まれてるみてぇだな?淫売」 「っあ、あっ、あっ」  太ももを掴んで、股を大きく割ったのは、鹿俣と鈴見だった。菱形に曲がった太ももを、力任せに拡げる教え子が、荒い息を吐く。  鹿俣は正一の萎びた性器を弄り、鈴見は薄い腹を揉み込んでいた。 「この雌孔で男を垂らしこんでたんだろ?ええ?」  桑山が後孔に、力任せに腰を叩きつける。棍棒で内臓を押し上げられる感覚に――正一の体は痙攣していた。  そうすれば、ますます教え子の手が、這い回る。河原で、弄り殺してしまった蛙をまだいたぶるように、若い男達は残酷だった。 「あぁぅ、あ、あっ……あ~~~」  口から垂れ流しになった涎が、畳に染みを作っていた。男の骨ばった手に抑え付けられて、唇を動かす。息も絶え絶えになった被食者の頭を撫でるのは、里中だった。 「あー、クソッ」  なかで陰茎が膨れ上がる。内壁に熱い精液をかけられ、痙攣を起こしていると、乳首を捻られた。 「あんっ」  ずるりと凶器を抜かれ、正一の体は痙攣していた。栓を抜かれた孔から、たらたらと白濁液を漏らしていた。  局部を拭いた桑山が、顎をしゃくった。 「……いいぞ」  腹を空かせて、限界だった犬が、正一に食いついた。鹿俣は無造作に指を突き入れ、鈴見は性器を頬張る。  鹿俣が指を入れると、じゅわりと股から精液が溢れ出した。教え子は魅入られたように、指で男の精を掻き出していく。久しぶりの、上等な肉。犬達は餌を囲んで――少しでも自分の取り分を増やそうと、正一を苛め始めた。 「や、やめっ――ふわぁっ、んんぅ」  身を捩ろうとすると、首に痛みが走った。締め付けるのは、犬の首輪――里中に拉致され、長屋に連れて来られた正一に、桑山が圧し掛かって嵌めたものだった。 『雌犬にはぴったりだなぁ』  鎖は家の柱に結び付けられ、正一は畳に転がされた。身を捩ろうにも、首輪が締め付ける。裸にされ、照明ランプの下、朱色に染まった肌が、浮かび上がった。 『この淫売がぁっ!』 『ひぃっ』  桑山は、肌に残る情痕に、怒りを爆発させた。正一が違う犬に――身を委ねた証拠が、体中に残されていた。桑山は正一を四つん這いにすると、指を乱暴に突き入れた。 『ここを犬に舐めさせたのか?!』 『いやぁっ、やめっ、やめ、てぇ、くわやまぁ』  首輪を付けられ、獣のように犯された。今度は体をひっくり返され、照明の下、局部を晒した。教え子達に体を取り押さえられ、また陰茎を突立てられた。 「せんせぇ、おくちあけて?」 「ふう、ぐぅぅ」  正一の目の前で、里中がチャックを降ろす。勃起した性器は飛び出すと、正一の口に突進した。髪を掴まれ、乱暴に揺すられる。 「ふうぅ、ふうん、んんっ」 「あ~、先生のなか、きもちいぃ」  恍惚とした里中が、腰を振る。開脚させられた太ももを、鈴見が吸った。皮膚の薄い場所には、犬に噛まれた痕が点々としていた。 「ふうぅ、んんん~~~」 「この雌犬はここで飼う……好きにしろ」  タバコを吸う桑山が、憎々し気に正一を見下ろしていた。拘束された正一の周りで、雄犬が色めき立った。 「好きにしていいって」 「いつ犯ってもいいんですか?」 「ああ、いいぞ。こいつは万年発情した雌犬だからな……好きに犯れ」 「――先生」  桑山の一言に、鹿俣が巨根を挿入した。みちみちと内壁を拡げられ、正一の背中がしなる。男のイチモツを咥えた腹はパンパンになっていた。 「ふうぅん!」 「せんせ、せんせいっ」  がつがつと力任せに、屹立を突立てられる。亀頭があたる部分に――正一の反応がことさらに良くなる場所を、鹿俣がしつこく突いた。 「ああ、すげぇ。先生のなか、うねるっ、うねるよぉ」 「おい、鹿俣、壊すなよ!俺もやるんだから」 「そうだよ、まだ俺、挿れてない!」  腰を振りたてながら、里中が文句を言う、正一の孔に憑りつかれた鹿俣は、無視して抽挿を続けた。  正一は内臓を突き破られる感覚に、体をしならせた。汗が噴き出し、涎が止まらない。快感に耐え切れず、脚はガクガクと震えていた。  青臭い、若い雄の精液を飲み込んだ頃、なかで射精されたのが分かった。 「次は俺」 「先生、俺のも舐めて下さい。里中ばっかり可愛がって、ずるいです」 「先生のお乳、甘い」  柱につながれた雌犬の周りを、ぐるぐると若い男達が回る。男達に汚された正一は、股を拡げて、ぼんやりしていた。  休む間もなく、誰かが正一に圧し掛かる。好き勝手に使われた後孔は男の精を垂れ流していた。誰かが射精すれば、また体重をかけられる。股から精液をほじくり出す指に、悶えた。 「――おい、俺は仕事に行くが、やりすぎるなよ」  吸い終えたタバコを灰皿に押し付けると、桑山が立ちあがった。 「はい」 「はーい」 「分かりました」  正一に群がった教え子たちが、次々と声を上げる。その声を遠くで聞く正一は、服も着せられず、畳の上でぼんやりしていた。  男達に汚された股を拡げ、放心する姿は、煽情的だった。艶めかしい愛人の裸体に、桑山の咽喉が蠢いた。 「今日はこいつが逃げねぇように、見張っとけ――逃げようとしたら、脚でも折れ」 「はい」 「そうしたら先生の脚、ずっと舐められるね」  場違いなほどに明るい里中が、正一の脚を持ち上げた。ぺちゃぺちゃと指の股を舐ると、鹿俣は胸を弄る。鈴見は教師に、熱い接吻を繰り返した。  逃げられるわけがない――酷使された体は、立ちあがることもできなくなっていた。腹這いにされた愛人の裸体を、桑山は舐め回すように見た。  ――砂糖に大量の蟻が群がっているようだった。闇市でも滅多に手に入らない、白砂糖。甘くて、ずっと舌の上で転がしたくなる砂糖は、正一そのものだった。 「朝には帰る……やり殺すなよ」  桑山の注意を、年若い男達は素直に聞き入れた。これから永続的に共有するには、少しずつ味わうのが一番だと、頭では理解していた。 「美味しいねぇ、先生は」  一度本物を舐めたら、政府が支給する人工甘味料には戻れない。噛んで、舐めて、全身をしゃぶったら、甘い汁が口いっぱいに広がる。  桑山が夢中になった肌は、他の雄を虜にしないはずもなく――蜜を啜ろうと、蟻が群がっていた。  …… 「――せんせぇ」 「……?」  意識が朦朧とする中、正一は「先生」に目を開けた。覆い被さっていたのは、里中だった。腰を振りながら、教師を抱きしめた。 「あっ、あっ、あっ、んっ」 「せんせぇ、俺達ね、約束したんだぁ」  体液に塗れた体を絡ませ、口づけをした。くちゅくちゅと舌を絡めていると、頭上から会話が聞こえてきた。 「――約束の時間は?」 「一時間後、で――先生を――に運ぶ」  涎を垂らした正一は、鹿俣と鈴見の会話が半分も入ってこなかった。ぼんやりと焦点の合わない目で、里中を見やる。  半分壊れた――自分達が壊した年上の男を、里中は愛おしそうに抱きすくめた。 「ふふっ、せんせぇ、かわいい」 「あっ、お、おく、つ、ついてぇ」  がくがくと腰を揺すられ、正一の後孔は蕩けていた。媚肉はふっくらとし、男を包み込む。にちゃにちゃとぬかるんだ土地は、子種を搾り取ろうと、陰茎を締め付けていた。 「桑山さんはいつ、先生を独り占めするか分かんないから……でもね、これで先生と、これからもやれるんだぁ」 「あっ、ああっ」 「――まだ時間はあるし、遊ぼう」  鈴見の提案に、鹿俣が「何を?」と疑問を口にした。鈴見がポケットから取り出したのは、掌に収まる程度の容器だった。  里中が声を上げた。 「あー、それ!娼館のやつじゃん!勝手に持ち出してぇ」 「いいだろ。発情交尾、したくない?」  鈴見が発した単語に、鹿俣が唇を舐めた。里中の目が細まり――珍しい玩具を手に入れた、残酷な子どもの表情だった。  快楽に浸された正一は、獰猛な気配に気づけなかった。 「おい、里中、抜けよ」 「あ~、こんな中途半端で、俺まだイってないよ!」 「じゃあ、お前が最初にやらせてやるから」  里中は渋々、性器を引き抜くと、手を伸ばした。 「俺が塗る~」 「俺も塗りたい」 「おい、量あんまりないんだよ」  容器を開けると、とろみのある液体が入っていた。潤滑剤のようなそれを、青年たちは指にたっぷり取ると、正一の太ももを掴んだ。 「先生、これね、言うこと聞かない娼婦の股にね、塗るんだよ」 「……ぁぁ……?」  ひんやりとしたそれを、里中が後孔の縁にたっぷりと塗り付ける。次に、鹿俣が指を入れて――にちにちと内壁に塗らたくられた。 「それで柱とかに縛り付けてね、放置するんだ。そうすると、だんだんここが熱くなるんだよ」 「っひぁ」  鹿俣が指を抜くと、鈴見が残りを尻に垂らした。ぱっくりと口を開けた孔は、とろとろと飲み込んでいった。 「熱くて熱くて、おかしくなるんだよ。股おっぴろげて、助けて、助けてって泣き叫ぶようになっちゃうんだぁ」  液体がじわじわと内壁に吸収されていく。染み込んでいく媚薬に、正一は鳥肌を立てていた。気味の悪い感覚に身を捩ると、三人に体を拘束された。 「な、なにっ、これぇっ!」  手足をばたつかせようとすれば、鈴見の指が深く侵入し、液体を塗りこめられる。ねちねち内壁を塗り潰され、正一は悶えた。 「あ、あぁ……?か、ぁ、あ、あつ、いっ!あつい!やぁっ、あついぃ」 「あ、効き目早い」 「先生、敏感だからかなぁ?」  股からじくじくとした痛みが広がった――と思ったら、粘膜を炙られているようだった。痛みを伴う熱さが、局部を侵していく。股を弄ろうとしても、手足を拘束されていた正一は、絶望した。  首を振ろうとしても、首輪が締め付ける。責め苛まれる正一を、教え子達は取り囲み、弄り出した。 「これならちんこにも塗れば良かった」 「ここも塗ったらよかったね」 「あぁんっ」  長時間犯されて、腫れあがった乳首を摘まみ上げる指。乱暴に性器を扱く手。そして発火したように熱くなった股――全てが正一を狂わせた。 「あつぃい!あついぃぃっ!お、おまたぁ、へんっ!へんになるぅっ!」 「はは。ね、先生。熱い?辛い?……楽になる方法があるよ」 「あつぃ!あついのぉっ!た、たすけ、てぇっ!」  涙でぼやけた視界には、ほくそ笑む里中が映っていた。いたずらのように、指で孔を弄られる。熱く爛れた場所を掻き回され、正一は叫び声を上げていた。 「先生、凄いなぁ」 「本当に発情するんだな」 「あのね、先生。男の精子、かけられると収まるんだよ――どうする?」  教え子の残酷な問いかけに――熱が暴走した正一は、泣き叫んだ。 「いれてぇっ、いれてぇっ、いれてぇっ!」  一気に挿入され、正一はむせび泣いた。熱く熟んだ内壁が、硬い陰茎に、纏わりつく。ゆっくりと焦らすように抜き差しされて、正一は堪らなかった。 「もっとぉっ!おくっ、おくっ!ついてぇ!」 「あ、すげっ」  正一はかくかくと腰を振りたてていた。以前、久野木の上に乗り上げ、腰を振った時のように。覆い被さった男の下で、陰茎に股を擦り付けていた。 「おくっ!ついて、ついてっ!あついのぉ、あつい!おしり、とけちゃうぅ!」 「首輪、はずそーよ。先生が腰振ってるとこ、見たい」  組み敷かれた体を起こされる。里中を押し倒す恰好になると、正一は我を忘れて、腰を振った。  涎を垂ら流し、腰を振り立てる様子は、発情した雌犬そのものだった。激しく上下する後孔から、粟立った体液が音を出していた。 「おく、おくぅ!きもちいい、きもちいぃ!」  雄を欲しがる雌犬に圧し掛かられた男が、苦し気に息を吐いた。 「あぁ~、っ発情交尾、もってかれる……っ」 「おい、早くイけよ、回せ」 「あぁ、あぁっ、ああああっ!」 「先生、声、聞こえちゃうね」  鈴見が、放り出された正一のズボンを漁る。ポケットに入っていた、折り目の付いたハンカチを丸めて、正一の口に突っ込んだ。 「ふぅんっ、んんっ!んんんっ~~~」  正一は泣きながら、腰を振っていた。熱と痒みは、一向に収まらない。じゅぷじゅぷと滑りが良くなった孔で、雄を締め付けた。 「これじゃあ、発情した鳴き声に他の男が寄ってくるよ」 「んぅっ、ふうんっ!」  細い腰を懸命に振っていると、玄関から叩きつける音がした。正一は自分のせいで他の男が来てしまったのかと――期待から、体を戦慄かせた。  もっと、もっと、男がいる。男が欲しい 「あれ、時間?」 「あ、先生、まっ、てぇ!もう少し、っ、ゆっくり」 「ふぅんっ!んんんぅ!」  媚薬で制御の効かなくなった腰を、振り立てる。口に咥えさせられたハンカチから、懐かしい匂い――耽溺した男を感じて、性器をきつく締め上げた。 「俺が出るよ」 「おい、なんかおかしくないか?!」  乱暴な音と、バタバタと駆け回る足音がした。 「んんぅ、んっ――?」  快楽で溶けた正一の頭に、叫び声が響いた。警察、人身売買、桑山……どうでもいい。男がいる。男がもっと欲しい――教え子の上で、背中をしならせていた時だった。 「警察だ!桑山はどこだ!」 「な――は?!」 「なんで、は?どういうこと?」 「動くな、全員、動くな!」  長屋に踏み込んだのは、五、六人の警官だった。皆(みな)、男に圧し掛かる裸の正一を前に――瞠目したのは一瞬。鹿俣や鈴見に飛びかかった。 「桑山はどこだ?!」 「知らねーよ!なんだよ!どういうことだよ?!」  大声を上げた鹿俣を、警官が畳に沈める。鈴見は腕を捻り上げられ、顔を押し付けられた。騒然とした周囲をよそに、正一は腰を振っていた。  快楽に沈められた頭では、周囲を認識することもできなくなっていた。 「ぅんっ、ふぅん、ぅんんんっ」 「おい、あんた、男娼か――?」 「あ、そちらの方は無関係ですよ」  戸惑う喧騒の中、静かな声が響いた。ぎしぎしと廊下の板が揺れる音がする。部屋に入ってきたのは、スーツ姿の久野木であった。 「お疲れ様です。この人は私が引き取りますから」  肩を掴まれ、里中から引き抜かれた。性器を引き抜かれる衝撃と――それでも疼く体は、男を求めていた。無意識にもがくと、体を抱き上げられた。 「んんっぅ」 「さ、先生、帰りましょうね」 「――おいっ、約束が違う!」  久野木に飛びかかろうとする里中を、警官が殴りつける。くぐもった声と一緒に、ばたばたと取り押さえる音が、長屋に響いた。 「こいっ!立って歩け!」 「お前たちには聞くことがある!」 「――んせ、せんせぇっ!まって、せんせっ!」  引きずられていく三人を、正一はぼんやりと見つめていた。正一に縋るように、手を伸ばした里中が、どんどん小さくなっていく。  ドアが閉まる音がして、正一の体はくずおれた。すかさず支えた久野木が、唾液塗れのハンカチを取る。 「……先生?」 「……?」  微笑んだ美男子が、体液に塗れた唇を合わせる。清めるように、正一の唇をそろりと舐めた。
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