今宵を星の降る夜に

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『今朝は生憎の雨模様で今夜まで雨は続くでしょう』 私は寝起き直後でまだ冴えない頭を抱えていた。 『それでは今日も元気にいってらっしゃい』 八つ当たりするように、強い力でリモコンを押した。 自室のテレビが消え、聞こえてくるのは外からの雨音だけ。 天気予報によると雨は夜まで続くらしい。つまり、今日は星空を見れそうにない。 もし、居たとして。 居ないだろうけど、もし居たとしたらーー冷たいやつだよ、神様っていうのは。 せっかく各方面に頭を下げ倒して取ってきた外出許可は無駄になった。 ツキコちゃんから足とパパを奪ったくせに、ささやかな楽しみまで奪っちゃうの? 昨日、星を見に行けるって伝えた時のツキコちゃんの目、今まで見たことないぐらいに輝いていたのに…… 神様ってのは本当に最低な強奪者。色んなものを奪っていく。 私たちの期待を奪っていくし、ツキコちゃんからは足と家族と願いを奪うしーーヨウ君からは目と、もうすぐ命を奪っていく。 ヨウ君は目が見えない。正確にはこの入院生活で見えなくなった。 何回検査を重ねても、どれほどの名医が執行しても、神様はヨウ君の命を手離してくれない。 どうにもならないことは、やっぱりある。 雨は止まず、不快な雨音が頭に残る。 「あぁもう!」 自分の非力さとタイミングの悪い雨に腹が立って手に持っていたリモコンを放り投げた。 『すごいですねこれ!まるで魔法みたい』 『ええ、防災グッズとしての活用も期待されています。子供達にあげると喜びそうですよね』 リモコンが壁に当たって偶然ワイドショーが映し出された。 どうやら便利グッズの紹介コーナーらしい。 『キレイですよね』 あれ、これ、なんだっけな。前に見たことある。確か、光をーー 「そっか……これなら!」 私はそのまま家を飛び出した。
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