今宵を星の降る夜に

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「ただいま戻りました!」 木村先生とツキコちゃんがリハビリから病室に戻ってきた。時間はお夕飯前、よしっ完璧。 「ツキコちゃん、頑張ってましたよ」 「……そんなことない。私なにもやってないもん」 ツキコちゃんはそう言いながら横に視線をずらした。 「先生のとこに来てくれただけで嬉しいんだよ。顔見せてくれてありがとね」 木村先生は回り込んだ後しゃがんでツキコちゃんと目を合わし、爽やかにはにかんだ。あーあ、ツキコちゃん照れちゃって。顔を赤くして木村先生から顔を背けちゃった。 「リハビリ先生って『モテ男』なの?おんなたらし?おんなのてき?」 さすがヨウ君、よく見てるね。 「さ、木村先生モテ自慢はそれくらいにしてください。ねぇツキコちゃん」 そんなことしてません!と木村先生がうるさかったが無視をした。 「ツキコちゃん、あらためてごめんね。今日星空見してあげるって言ったのに」 「……ううん、期待してなかったから」 「がっかりさせちゃってほんとうにごめんなさい。……でもね、期待はしてもらって問題ないよ」 「えっ?」 「木村先生!」 「お任せください!」 私の掛け声と共に木村先生がダッシュで扉の近くへ向かう。ノリが良すぎてうっかり惚れてしまいそうだ。 「えっ、なになに」 「大丈夫だよ、ツキコちゃん。上を見てて」 不安にるツキコちゃんの手をヨウ君がそっと握った。そのとき、部屋の電気が消えて一瞬真っ直ぐになる。 「…………わぁ!」 ツキコちゃんが見上げ、そしてヨウ君が思い描いているであろうその天井。 そこには様々な大きさのお星様が所狭しと優しく輝いていた。 「きれい……」 今朝のワイドショーでは、光の下に置いておくと暗闇で光る蓄光紙が紹介されていた。 天井は星の形に切った蓄光紙で埋め尽くされていた。 「こんなにたくさん……すごい」 土屋先輩ありがとうございます。手伝ってくださったおかげでツキコちゃんのこんなに喜んでる顔が見れました。 「へへっ、僕も一応手伝ったんだよ。僕の星どれかわかる?」 天井の星空には様々な星があり、私達の星の中にはヨウ君が作った少しだけ大きい星も混ざっていた。 「うん、わかる、わかるよ。ヨウの作った星、すぐにわかった。だって私、こんな綺麗なお星様見たことないんだもん」 ツキコちゃんは少し涙声だった。土屋先輩の教えがなかったら私も泣いていた。 「形は曲がって少し大きいかもしれないけど、私こんな綺麗なお星様を見たことがない」 すると、テープの留めが甘かったんだろう、星が一枚ひらひらと落ちてきた。 「星、降ってきちゃったね」 ツキコちゃんは歪な星を掴んで心から笑っていた。
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