今宵を星の降る夜に

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「神様なんてほんとはいないの」なんて正直に言えたらどれほど楽か。でも言えない。言えるわけがない。だって私は看護師だから。 「私治るよね?神様にお祈りしたもん、絶対治るよね?」 「もっちろん!神様は花ちゃんのことちゃんと見てるよ。絶対大丈夫だから」 神様とは関係なくこの子の容態は悪化し続ける。現代の医学ではどうにもならないから。 「私またお外に出られる?」 ただの看護師である私ではどうしようもないことが多い。 この子を外に出してあげるーーどころか痛みを取ってあげることさえできない。 目の前で苦しむ患者さんを前にした気持ちは辛いなんてもんじゃない。 こう言う時に私は猛烈に後悔する。なんでこの道を選んでしまったんだろうって。 でも。 そうは言っても私は看護師だから。 笑顔を貼り付け無責任な嘘でもいいから。 「花ちゃんは絶対大丈夫だよ。看護師さんがなんとかするから」 こう言うしかないじゃない。
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