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午前の休憩時
実は私はゲームのモブキャラである、という話を同僚の佐藤に話したら笑われた。
笑われたというより、爽やかに相づちを打たれた、というほうが正しいけど。
人気のない自動販売機。その横の壁際に設置された、背もたれのないベンチに並んで座った佐藤と私。
佐藤は長い脚を組み、缶コーヒーのフタを開けた。
カシュ……という音を含め、CMみたいな光景だ。
白のYシャツ姿が眩しいよ。さすが我が社の〝王子〟だね。
「何?」
ほんのわずかに首を傾げる様もCM……違うな。
アレだ。月九みたいな。
主演の可愛らしい女優さんと、恋に落ちたりする、アレ。
「何でもないよ」
すまんね、社内外の佐藤ファンの人たち。
今、この美青年かつ好青年の横にいるのは、美人女優じゃなくて地味〜なモブキャラだよ。
まぁ、社内の休憩時に女優も何もないけど。
私は買ったばかりのドリンク缶を開けもせず、両手で握りしめた。
私も、飲みたいのはやまやまだよ。
休憩時間だし、喉も乾いてるし。
でもさぁ……
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