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嗚咽するように土下座をしながら叫ぶ慎太郎の肩を、竜馬はそっと叩き。
「慎さん・・オマンはようやったがよ」
「竜さん!慰めはええ!」
慎太郎は泥だらけの顔を竜馬に向けると、涙で潤んだ目を見せまいと、何度も首を横にふった。
「まぁまぁこれでも喰って落ち着け」
慎太郎は海岸から奔りに奔ったので、カラカラに喉が渇いているため、竜馬が差し出した碗が水か茶がはいっているものと勘違いし、湯漬けの碗を一気に飲み干そうとし、むせかえってしまった。
「なんがこりゃ!」
慎太郎の表情が怒りながらも、丸い表情にかわってきたのを見ると、竜馬は満面の笑みを慎太郎に向け、大笑いした。
「慎さんは・・・ほんに、そそっかしい」
「なんが!急いで駆けつけてきたもんに湯漬けを出す竜さんこそ、どおかしてるがよ」
二人は今までの張り詰めた空気が嘘だったかのように大笑いし合い、また顔を見合わせると大笑いし始めた。
桂はそんな様子を力なく眺めて思う。
(土佐者はわからん・・・こうやってすぐ笑いあい次は酒を浴びるように呑む・・・ああ分からん分からん)
「小五郎兄ぃ、呑もう!酒じゃ酒じゃ」
(ほらきた・・・土佐者は酒でなんでも解決できるとおもっておるのか。。。)
呆れながらも桂は酒に付き合うことにした。
桂小五郎という人物は、この時代の志士にしては鋭角的な部分が少なく、いざ我が身に危機が迫れば逃げることもいとわない、そんな人間であり、計算高い腹黒さももっていないため、憎めない人物でもあった。
その桂が、数杯酒を飲むと突然立ち上がり、声を上げた。
「坂本君!中岡君!僕はこのままでは終わらんぞ!今回約束を違えたことは薩摩の非だ!そうだろう坂本君!」
「そうじゃそうじゃ!今回薩摩は長州におおきな借りを作ったがよ」
「そうだろう!ならば薩摩にはキッチリ借りを返してもらわねばならん!そこで坂本君に頼みがある!」
桂は竜馬の横に座り、酌をすると、声の調子を変えた。
「キミは薩摩に支援をうけ商社を作ったそうだな、それを使わせてくれんか」
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