星の数はわからない

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今日も遅くまで残業だった。 今は20時20分。駅前の本屋は21時まで空いているから、少し寄ってから帰ろう。 「お疲れ様です」と会社を出て、履きなれたパンプスをコツコツ鳴らして、早歩きで本屋まで行く。 本屋さん、大好き。 私が特に好きなのは、雑誌コーナー、書店のおすすめコーナー、文芸書の新刊コーナー、あとは料理本の棚。 特にお目当ての本があるわけではないけれど、週に2~3回は本屋に通う。 そして好きなコーナーを巡回。 見たこともない本と出会うのはいつも心躍るし、なにより沢山の本に癒される。 ネットで電子書籍をダウンロードして読んだりもするが、 本と出会うときはリアルが絶対にいいと思っている。 なぜなら、なるべく先入観なく出会いたいから。 ネットで本を探すときは、どうしても星の数やレビューを気にしてしまう。 読まなければいいとわかっていても、目に飛び込んでくるのだ。 本屋なら、書店員のポップや帯くらいだ。 「犬井くるみ『シチュエーション・ラブ』、星3、かな」 私が平積みにされている本に手を伸ばそうとしたとき、隣から声が聞こえた。
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