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え、と思って隣を見ると、前髪の長いメガネの青年がいた。
わたしよりも少し若そうだ。
は?私が取ろうとした本の評価を、なんで言うわけ?
不快。
青年は私の方を見もせず、私は彼の横顔しか見えない。
ええい構うもんか。
私は『シチュエーション・ラブ』を平積みから一冊取った。
するとまた彼が口を開いた。
「犬井先生なら、デビュー作の『Jの寓話』の方が評価が高いですねぇ。
ネットでのレビューの評価は割れていますが、星は4.5かな。まぁ僕もその昔読みましたが、4.5は妥当と思われますね。犬井先生がお好きということは、大どんでん返しがお好きですか?それなら赤辻先生の…」
「ま、待って」
思わず高音早口でまくしたてる彼を制した。
彼は初めて私の方を見た。
長い前髪の間からかろうじて見える彼の目は、きょとんとしていた。
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