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「そういうの、いいよ。なにも知らない状態で、本を見たいんだから」
「そ、そうですか」
彼は私から目をそらし、メガネの位置を右手中指で直した。
たいしてずり落ちてもいなかったメガネ。
「ではでは」
私は手に取った本を携えて、パンプスをコツコツと鳴らしながらレジまで歩き出した。
不機嫌さがにじみ出てるかも。でもいいんだ。失礼な奴だし。
あいつは、まだあの新刊の棚の前に突っ立っているようだった。
私は足早に本屋を出た。
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