星の数はわからない

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***** 翌日、また仕事帰りに本屋に寄った。 この前と全く同じ時間だ。 あいつはいるかしら。 もし会ったら、文句言ってやる。 しばらく自分の好きなコーナーを回ってみたが、あいつの姿は見えない。 帰ろうとしたとき、「あの」と男性にしては甲高い声が聞こえた。 振り返ると、前髪の長いあいつがいた。 「あ、あなたこの前の」 「先日は、すみませんでした」 「そうよ、ていうか星の数デタラメに言って」 「え、デタラメ?」 「全然amazonと違うじゃない、見てよ、『シチュエーション・ラブ』は星4.5の傑作だったから」 私はスマホを取り出し、検索しようとしてみる。 「ああ、それはamazonとは違いますよ。僕の読書記録では星3なんです」 そう言って、彼は背負っているリュックから「私的読書記録Ⅻ」と書かれているB5のノートを取り出した。 ニコニコしながら、彼はページを開き、 「シチュエーション・ラブ → ★★★☆☆」 と書いてあるページを私に見せた。 私は唖然とした。
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