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初めての結婚記念日 17
「真司が初めて持ってきてくれたチーズとワイン!」
忘れもしないチーズとワイン。
もう真司と会えないかもしれないと、最初で最後になるかもしれない思いで、勇気を振り絞って食事に誘った時に、真司がお土産として持ってきてくれたチーズとワインだ。
「この夜のことは、忘れない。蓮と初めてあった夜も、コーヒーショップで会った時も、あれがあったから蓮と知り合えた」
そうだ。
あの偶然が重ならなかったら、今のこの幸せはなかっただろう。
「でも、あの日、蓮が勇気を出して俺を食事に誘ってくれ、あんな素敵な料理を俺のために作ってくれて、心に仕舞い込んでいた秘密を告白してくれたから、今の俺たちがあるんだ」
「……」
「このチーズとワインは、あの日の俺達を思い出させてくれる。そう思うんだ」
ああ、思い出させてくれる。
忘れたことはなかったが、このチーズとワインはあの日のことを、鮮明に思い出させてくれる。
真司はおもむろに蓮を抱きしめ、
「蓮、あの時、勇気を振り絞ってくれてありがとう。俺を選んでくれて、ありがとう」
と、言った。その目には感謝の気持ちが昂り涙が溜まり、声が震えた。
「真司こそ、俺がゲイだと告白した時も、俺の気持ちも受け止めてくれて、ありがとう…」
蓮も感謝の気持ちで、涙が溢れた。
「これからも一緒に歩いていこう」
真司がそう言うと、蓮は真司の目を見つめながら、こくんと頷いた。
そして2人の距離が近くなっていき、唇が重なった。
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