02:青色の声

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 ――何でもない、大丈夫だ。  意識して呼吸を整えながら、『レディバード』から意識を引き剥がす。今は状況の把握が先だ。 「それと、あれは……」  霧を見通す目は、輸送艇と『レディバード』を追う小型飛行艇を三隻捉えていた。『エアリエル』の探査記術(サーチ・スクリプト)は、それらが船籍不明の偵察用と思しき複葉飛行艇一隻と、それを護衛する重武装の単葉戦闘艇二隻であることを告げている。  とはいえ、あえて『エアリエル』に言われるまでもなく、その船には見覚えがあった。 「教団の……、幽霊船?」  幽霊船。自分で言っておきながら、酷い頭痛を覚える。  まさか、教団は、三年前に解体されたはずで、連中の船だって一つ残らず接収しただろう。そう思いたかったのだが、俺の視界に映る小型艇は、かつて全世界を恐怖に陥れた『原書教団(オリジナル・スクリプチャ)』が操っていたそれと完全に一致していた。  何故、今になって教団が? という戸惑いの間に、輸送船を守るように弾むように飛び回っていた『レディバード』の機関銃が、突出した戦闘艇の腹をぶち抜いていた。  ――操縦だけじゃなく、砲撃の腕もいいときた。
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