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つい舌を巻いてしまうが、俺の記憶が正しければ『レディバード』の武装は基本的にそれ一つ。しかも物理兵装である以上、弾数にも限界がある。
案の定『レディバード』はその連射を最後に逃げに徹し始めたが、向こうさんは『レディバード』も輸送艇も逃がす気はないらしく、執拗に『レディバード』に張り付いている。
これは、のんびり観戦している場合でもなさそうだ。
女王国海軍に共通の帯域を指定して、『エアリエル』を通して通信記術を展開する。
『聞こえるか。こちらサードカーテン基地所属、翅翼艇第五番「エアリエル」正操縦士、ゲイル・ウインドワードだ』
決まりきった口上を早口に吐き出す。まずは事情がわからないと話にならない。続けて話を聞こうとした、その時。
あの「青い」声が、頭の片隅で囁いた。
『ゲイル・ウインドワード』
ゲイル。名前を呼ばれただけで背筋がぞくりとする。嫌な感覚ではない。むしろ、それとは正反対の。
だが、その感覚の正体を確かめる前に、船団からの通信が割り込んでくる。
『ウインドワード大尉! 青き翅の霧航士、救国の英雄か!』
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