02:青色の声

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 ――救国の英雄。  その空虚な響きに、高揚はさっぱり消え失せて、苦虫を噛み潰すような心持ちになる。どうせ向こうには見えてないのだから、どれだけ渋い顔をしても許されると信じている。  俺は「英雄」なんて肩書きが欲しくて飛んでるわけじゃない。結果として、そうなってしまっただけだ。どれだけ高く、どれだけ速く飛んでも、本当に欲しいものは永遠に手に入らないってのに。  つい頭の中を支配する余計な思考を振り払い、向こうからの声に集中する。 『こちら時計台の輸送艇「ホワイトカーゴ」! サードカーテン基地への備品輸送の途中に、船籍不明の武装艇に襲撃を受けている! 救援を願う!』 「うちに輸送艇が来るなんて聞いてねーぞ」  念のため通信の外で呟く。今日が特別な日だと知っていれば、近くまで迎えに行くくらいはしたぞ。何せ暇なんだから。普段あまりにも何も起こらないせいで、今日も何も起こるまいと信じていたあたり、俺自身の平和ボケを自覚させられたが。 『で、そっちの「レディバード」は? 護衛か?』
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