02:青色の声

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『ああ? いちゃ悪ぃかよ』  頭ん中に割り込んできた憎々しげな野郎の声に、因縁をつけ返す。通信の出所は目の前の戦闘艇だ。魄霧を喰いながら滞空する『エアリエル』に対し、奴さんは水平に旋回しながら、ぎりぎり『エアリエル』の武装の間合いの外で距離を測っている。案外冷静だな、こいつ。  それだけ、俺と『エアリエル』の手の内がバレてるってことでもあるんだが。有名人って辛いよな、ほんと。 『つーか気安く呼ぶんじゃねーよクソ野郎。手前、何様だ?』 『答える筋合いはない』  そりゃそうだ。俺も、もしお前の立場だったらそう言うだろうよ。  さて、ここからどう出るべきか。というか、俺は勝手に散歩してただけだから、当然交戦許可も降りてないわけなんだが、これ、撃ったら絶対後で怒られるパターンじゃねーか。でも不可抗力っていい言葉もあるし撃っていいかな、とかなんとか思っていると、 『……「エアリエル」、こちらサードカーテン基地。聞こえてる?』  やっと、聞きなれた声が聞こえてきて、ほっと息をつかずにはいられない。
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