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その澄み切った瞳は、真っ直ぐにカンヴァスに向けられているようで、きっと、遥か彼方を見ている。それは、鮮やかな光と、青に満ち溢れた世界だ。誰一人として見たことのない、もしかしたらこの世界ですらないかもしれない「どこか」を見据えて離さない。
やがて。
「なあ、ゲイル」
ぽつりと、青い沈黙に包まれていた部屋に響く、声。
「いつか辿りつけるかな、この景色に」
「決まってんだろ。そのために俺様がいんだから」
そう、俺は、俺たちは飛び続ける。
霧に包まれた空の向こう側、未踏の領域目掛けて。
「約束しただろ。俺様がお前の翼になる。霧を裂いて、吹き払う翼に」
「そして、俺が霧の向こう側を見通す目に」
「ほら、最高のコンビじゃねえか」
目を合わせることもなく、お互いに差し出した手と手を打ち鳴らす。『翼』と『目』である俺たちにとって、そのくらいは造作も無いことだったから。
そうだった。こんな他愛の無い約束を、無邪気に信じていたのだ。
――俺が、あいつを殺す日までは。
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