03:ゲイル・ウインドワードの三十秒

7/10
前へ
/379ページ
次へ
 かの教団が女王国軍、というか俺に恨みがある、というのはまあわかる。だが、こんな辺境に向かう輸送艇を襲撃して何になるというのだろうか。俺の疑問は、そのまま向こうさんの疑問でもあったらしく、訝しげな声が返ってくる。 『何故この輸送艇と備品が狙われたのかはわかりかねます』  やっぱり、備品って言ってるよなあ……。  疑問に疑問が重なって、何だかよくわからなくなってきた。ので、一旦考えることを放棄して、ふわふわと頼りなげに浮く『レディバード』に声をかける。 『あーっと、そっちは大丈夫か、「レディバード」の』  そういえば名前をまだ聞いていない、と気づいたが、正直どうだっていいと思いなおす。どうせ、基地に着けば任務終了、その後のことは俺のあずかり知らぬことだ。 『大丈夫。です』  一秒くらいのラグの後、たどたどしい、子供のような声が聞こえてきた。「青い」イメージを連れてくる、感情の動きがほとんど聞き取れない淡々とした声。声音から判断すると女、だろうか。つかみどころのない、妙な響きの声だ。
/379ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加