01:ゆめの青空

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 吠えた声が、本当に俺の喉から出たものかはわからない。船体と同調していると『エアリエル』の駆動音ですら、自分の声と錯覚することがあるから。  それでも、叫ばずにはいられなかった。言葉にならない叫びが、誰にも届かないまま、風の歌一つ聞こえない静寂に飲み込まれていく。  いらいらして、むしゃくしゃして、たまらなかった。  どれだけ飛んでも、俺はもう、あの青には届かない。あいつが俺の側から消えた今、飛ぶための「理由」はすっかり失われた。  あれだけ気持ちよく響いていた風の歌も、聞こえなくなった。  それでも、飛ばずにはいられない。飛ぶために俺は生まれてきた。飛ぶことは俺の本能そのものだ。だから、俺は、つまらない海をたった一人で飛ぶ。意味もなく、目的もなく。  この、使い物にならない体が、消えてなくなるその日まで。  ああ、と。腹の底に溜まっていた声を使い果たして、最後には情けない呼吸が喉から漏れた。  叫ぶだけ叫んだら、何だか、気が抜けてしまった。がむしゃらに、真っ直ぐに飛び続けていた『エアリエル』の速度を落とし、意識を引き剥がしながら呟く。 「帰るか、『エアリエル』」
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