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もちろん『エアリエル』は応えないから、勝手に同意だと思うことにして、基地の方角を確かめる。この白く濁りきった世界の中でも、『エアリエル』の目は霧を見通して帰り道を俺に示してくれる。
ゆったりと長い体を廻らせて、基地の方に頭を向けた、その時だった。
『……う……せい……』
「……ん?」
一瞬、魂魄の中に何かが割り込んでくる感覚があった。
通信記術。魂魄界を通し、対象の魂魄と情報を受け渡す記術だ。軍の基本的な通信方法で、『エアリエル』にも送受信用の魄霧機関が積まれている。どうやらそれが俺の魂魄に割り込みをかけてきたらしい。
ただ、基地からの通信とは明らかに波長が違う。とはいえ、魄霧の海を漂う無関係の通信を傍受したわけでもなさそうだ。こんな、魚一匹、鳥一羽見えない辺境の海を行く物好きなんて、そうそういるはずがない。
なら、今のは一体――?
最低限の機能だけを立ち上げていた『エアリエル』の視覚と、探知網を最大限に展開する。三百六十度を見渡す視界の只中に「俺」という存在が頼りなく浮かぶ錯覚に陥りながら、声の出所を探る。
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