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その時、もう一度、先ほどよりもずっとはっきりと、声が。
『……を、要請します』
――青。
頭の中に閃いたのは、声と、溢れんばかりの色彩。
その色彩は、俺の頭の片隅にこびりつく記憶と結びついて、白く濁っていた視界に青い空のイメージが重なる。それは、あの日のカンヴァスと同じ、色。
もちろんそれは単なる幻視で、すぐに俺の目の前から消え去ってしまったけれど。それでも、呟かずにはいられなかった。
「青、だ」
魂魄を介した通信は、声だけを届けるわけではない。ものの形や色を伝えることだって、できる。
だが、こんなのは初めてだ。ただただ「青い」とだけ感じる、声は。
聞いているだけで背中の真ん中辺りを震わせる、機械的な声。もう一度、もう一度その声を聞かせてほしい。声の正体を、確かめさせてほしい――。
その願いどおり、今度こそ、俺の魂魄は明確にその声を受け止めていた。
『救援を、要請します』
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