02:青色の声

1/9
前へ
/379ページ
次へ

02:青色の声

 救援要請。  ちらつく青い影を瞼の力で追い払い、一拍置いて、その言葉の意味を理解する。  誰かが、何者かに、襲われている。女王国の端っこも端っこである海上で。  そんなこと、俺がこの基地に逃げ込んでから一度もなかった。毎日のように海をほっつき歩いているにもかかわらず、だ。巻き込まれたら十中八九死に至る迷霧の帳(ヘイズ・カーテン)の側を好き好んで飛ぶのは、それこそ基地の観測隊か、海を飛んでないと息苦しくて死にたくなる変人、つまり俺くらいだ。  とはいえ、要請された以上駆けつけない理由はない。今、この海を飛んでるのが俺しかいないなら、尚更。 「頼むぜ、『エアリエル』」  俺の半身ともいえる『エアリエル』は中身を半分欠いたまま、通信が発生した座標に向けて真っ直ぐに飛ぶ。  目標は、すぐに見つかった。『エアリエル』の霧を広く見通す視界に探査記術(サーチ・スクリプト)を走らせれば、それがうちの船籍の船であることはすぐにわかる。時計台時代に世話になった、河豚に似た形の小型輸送艇だ。  それに加えて、輸送艇の周囲を舞う、丸々とした船にも見覚えがあった。
/379ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加