2人が本棚に入れています
本棚に追加
02:青色の声
救援要請。
ちらつく青い影を瞼の力で追い払い、一拍置いて、その言葉の意味を理解する。
誰かが、何者かに、襲われている。女王国の端っこも端っこである海上で。
そんなこと、俺がこの基地に逃げ込んでから一度もなかった。毎日のように海をほっつき歩いているにもかかわらず、だ。巻き込まれたら十中八九死に至る迷霧の帳の側を好き好んで飛ぶのは、それこそ基地の観測隊か、海を飛んでないと息苦しくて死にたくなる変人、つまり俺くらいだ。
とはいえ、要請された以上駆けつけない理由はない。今、この海を飛んでるのが俺しかいないなら、尚更。
「頼むぜ、『エアリエル』」
俺の半身ともいえる『エアリエル』は中身を半分欠いたまま、通信が発生した座標に向けて真っ直ぐに飛ぶ。
目標は、すぐに見つかった。『エアリエル』の霧を広く見通す視界に探査記術を走らせれば、それがうちの船籍の船であることはすぐにわかる。時計台時代に世話になった、河豚に似た形の小型輸送艇だ。
それに加えて、輸送艇の周囲を舞う、丸々とした船にも見覚えがあった。
最初のコメントを投稿しよう!