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メンバーズ
人嫌いの私が今日は珍しく、複数名で1つのテーブルを囲んでいる。
しかもあろうことにここは、私の自宅......正確には一人暮らししているアパートの一室なのだが、ここは私のテリトリーなのだ。
友達が極端に少なく(いないといったほうが良いかもしれないが)、業者に家に上がられることも大嫌いな私にしてみれば、これは異常事態でもある。
反面、嬉しい事態でもある。
小さなテーブルを4人でぐるりと囲い、テーブルの上には私の私物であるポットや食べ終わったお菓子の箱(それは今、物入れとなっている)、文房具や薬などが散らばっているが、
それらを1か所になんとかまとめてしまって、テーブルの上には皆で持ち寄ったジュースやお茶の大きなペットボトルに紙コップ、お菓子などが置かれている。
「ところで今日は......せっかくこうして集まったことなので、皆さんのこれまでのお話をしてみますか」
今日はこういったお話をすることは、暗黙の了解だった。
もちろんこれまでも話すきっかけはあったが、不特定多数がいる場所や、不慣れな人や苦手な人がいる環境で、あまりこういった話を改めてする機会はなかったので。
「じゃんけんをして、負けた人から時計回りに」
「はぁい」
テーブルの上で適当にされるじゃんけん。
私の向かいに座っている、赤茶色のウエーブヘアーを肩まで伸ばした女性......上田さんが一人だけチョキを出して負けた。
「じゃあ私からいきますか」
上田さんはマスクを少し外し、かすれた声でいつも通りに話し始めた......
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