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小さな少女の物語
青葉さんは見た目ぼんやりした印象で、とても人懐っこくて小さな少女のようでもある。
それは小さな背丈に童顔、更には化粧をしないことやダボっとした服装を好むので、余計にそう見えるのかもしれない。
伸ばし始めた髪を後ろで小さく束ねている青葉さんは、はにかんだ笑みを見せながら語り始めた。
「私ね、結婚していたんだけれど、旦那が家の中でよく怒鳴ってきたの。
たまに手を挙げられることもあった。
だけど実家が、離婚なんてとんでもない!っていうタイプの古い家だから、離婚もできなかった。
それでも我慢できなくて、息苦しくなって夜眠れなくなって、心休まる時がなくなって。
いつしか心療内科に通院して安定剤と眠剤を飲むようになってた。
元旦那はお金にだらしないところもあって、私の貯金にまで手を出した。
そのお金はギャンブルや浮気相手に使われていたらしいの。
私を心配した母親が、もういいからって言ってくれて、離婚することを受け入れてくれた。
私は元旦那とはとにかく縁を切りたかったから、裁判も何もしなかった。
貯金も失って実家に戻った私は、父親に散々嫌味を言われた。
それでも母親はかばってくれた。
母親もそんな父親と長年暮らしているうちに、いつしか安定剤や眠剤を飲んでいたらしいの。
私、離婚するまで全然気づかなかったんだけど......
そんなある日、苦労がたたったのか母親が倒れたの。
私の離婚やそれに伴う元旦那との話し合いも影響していたんだと思う。
私、お母さんにすごい迷惑かけちゃったから。
手術もできたんだけどお金がすごいかかるから、父親が猛反対して。
‘病は気からだ!‘なんていって、手術費を出そうともしなかった。
そしてお母さんは、成す術もなく、亡くなっちゃったの......」
.....青葉さんの目元には、少し涙が浮かんでいた。
青葉さんは紙コップに入れてある冷たい緑茶に、少し口をつけた。
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