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涙のあとに
「私、妹いるんだけど、地方で就職して家を出たの。
それから家にはあまり帰ってこなくなった。
家では父親とふたりっきりで、耐えられなくて……
ある日、マンションの屋上から飛び降りちゃったの……
だけど頭から落ちなかったから、命は助かった。
そこで母方の親戚がすごい心配してくれて。
叔父さん夫婦と一緒に暮らせることになって。
……そこで市役所の人に今の事業所紹介してもらったんだ」
青葉さんは紙コップに手を触れながら、そう言った。
「助かった時は、なんで目が覚めちゃったの?と思ったけれど、今はあの時助かって良かったと思う」
青葉さんは続けて言う。
「そうだよ。だからこうして出会えたわけだし」
上田さんが頷きながら返した。
「そうだよねっ!!」
青葉さんが鼻をすすりながら、にこりと微笑んだ。
「私、母親が倒れた時。
いろんな問題を家族だけで解決しようとしてた。
それは家が、閉鎖的で親戚付き合いをろくにしていなかったから、自然にそうするクセがついちゃったんだと思う。
だけど私には他にも親戚がいた、妹もいた。
頼って良かったんだと気が付いたの。
だから今は叔父さんたちに頼り過ぎてるけど……
妹ともたまに連絡取り合ってるし、最近手紙のやり取りもしてるんだ!
スマホでのやり取りでなく手紙って、温もりあって新鮮でおすすめだよ。
人間、窮地に追い込まれると、そこだけの問題として抱えてしまうけれど、そうじゃなくて。
人はひとりでは生きていけないから、周りに甘えても良いんだよね。
自立や遠慮も大切だけど、頼ることも大切なんだよね!」
青葉さんがまるで自分に言い聞かせるように……私たちに説得してくれるように、そう言った。
「じゃ、次は……」
「八幡さんね」
と、いつのまにか私の番になっていた。
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