ミルクチョコレート

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ミルクチョコレート

八幡さんとは私の名前なので、次は私の番。 大好物の四角いミルクチョコレートを食べて緑茶を飲んだ。 口の中にミルクチョコレートの甘い味と、緑茶のすっきりした爽やかな軽い苦味と冷たさが混ざり合って広がる。 私はすぅ……っと息を吸い、ぱっと息を吐いて話し始める。 「私の場合は……」 3人の視線がこちらに集中する。 だけどここの人たちは誰も私をバカにしたりマウント取って来ないから、緊張しているようで全然緊張していない。 「私の場合は…… 私、昔から変わってて、周りとうまくコミュニケーションが取れなくて。 自分としては馴染もうと頑張って、発生練習や会話中の勉強もしたけれど、空回りしてしまって…… 保育園から高校までずーっと浮いてて、いじめられて。 不器用で特技もなく、家族からもハッパかけられていて、だけど色々がうまくいかなくて。 いつしか家族とも険悪になった。 社会に出ても、うまくいかなくて、どこも頑張るんだけど、仕事を効率良くできなくて。 あとは病弱でもないのに疲れやすくて体力なくて。 なんでだろ、って思った。 図書館で色んな自己啓発本読んだし、その手のセミナーも行った。 だけどダメだった。解決策が見つからない。 いろんな知識を得て実践してみても、うまく行かなかった。 何故か根っからのネガティブ、悪い記憶ばかり鮮明に覚えていて、何度も思い出すから余計忘れられなくなる。悪い記憶ばかり。 それがある日、発達障害の特別番組をたまたま見たら、もしかして私もそうかも、と思って、かかりつけの心療内科で聞いてみた。 だけどあっさり否定されて、じゃあなんなんだろ、性格なの?と思ってた。 ……だけどどうしても納得行かなくて、都会の大きな病院で検査してもらうことにしたの。 ……そうしたら、やはり発達障害だった、と判明した」 そう言い、私は緊張しないための無意識の防衛本能か、泣かないための対策なのか自分でも分からないが、 皆の温かい視線が少しくすぐったくて、またミルクチョコレートに手を伸ばし、口に運んだ。 そしてまた、緑茶をひと口飲んだ。
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