8人が本棚に入れています
本棚に追加
カロが家に着いたのは夕暮れの時を廻り、もうあたりは真っ暗だった。カロの持つカンテラの光だけが、集落の外れの館の窓に、ちらちらと鏡に映るが如く、反射する。
そして息を整え、玄関の扉を開けた。
「遅いぞ、カロ」
「ただいま帰りました、父上」
「挨拶だけはいいな、お前は。はやく飯を食え。俺はもう済ましたぞ」
「はい、父上」
カロは無表情でそう答えると、自分の部屋に荷物を置きに向かった。
その背中に父の声が飛ぶ。
「また図書館に行って、詩を書いていたのか」
カロはびくりとして足を止めた。
「それでは、学業の成績が上がるはずも無いな。言わずもがなだ」
「父上…次の試験では頑張ります」
「俺が言いたいのはそこじゃない!!」
急に声音を甲高く父は怒鳴った。カロの想像通りだった。
最初のコメントを投稿しよう!