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「詩など書くなといっておろう!」
父の目の色は変っていた。夕餉にたしなんだワインのせいではない。酔いもせず、ただ純粋に父は怒っている。カロにはそれが分かった。しかしその父の怒りもカロにはおなじみのことだ。カロは一礼すると、そのまま階段を上ると、姿を自分の部屋に消した。
父はその姿を、苦虫をかみつぶしたような顔で見送り叫んだ。
「…詩など、書く男は…ろくな奴にはならんと何度言ったらわかる…!」
父のその声は部屋に入ったカロの耳にも届いた。
…もう何度このやりとりをしたかな、父と。
「数え切れないな…」
カロは真っ暗な部屋の中でベッドに寝っ転がると、ぼそっと呟いた。
そしてまた思うのだ。父はなぜあそこまでカロが詩を書くのを嫌うのだろうかと。
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