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前  旧来のインターネットに代わるHLA(Hypokeimenon Lexicon Akasha/基体語彙空間)が普及した背景には、人工言語であるPS言語(Pluralistic Sigil Phrase/多元的言語)の開発と普及が挙げられる。  またPS言語の発展に伴い、感情と体験の分離による記憶と記録の差別化が行われるようになった。つまり主体なき情報……純粋、且つバイアスなき客体情報の確立は、いわゆる情報産業に大きな革新となるばかりか、一方で知性についても議論されるほどの影響を与え始める。  結果、ある程度の完成を見た情報と知性の関係は、体験なき情報を記録、即ちモチーフと呼び、一方で体験ある情報を記憶、即ちストーリィと呼ぶ事となった。  モチーフはPS言語を要素にシーニュ座標(Signe Point)でテキスト化されたD地図(Discours Map)に等しく、ストーリィは更にHIM(Holonical Imformation Monad/調和型情報端子/ヒム)を加え、拡充したものと定義された。  PS言語の発展から知性の議論が可能となる事で従来のAI(Artificial Intelligence)とは一線を画する知性もまた生み出され、感情の発露・創造が認められる知性をSi.Hy(Similitude Hypostasis/相似位格/シハイ)と呼び、他をR.U.R.(Ragtags of Universal Regulation/普遍的規格の集合体/ルール)と呼び、旧来のロボットから差別化し、ラバロン(Labor-Alone)と命名した。  だが、ラバロンの進化は人との境界線を曖昧にしていった。特に高級なSi.Hyは人と全く同じ構造を持っていた為、世間はSi.Hyも含めたラバロンに一定の権利を与えるべきではないかとの訴えも起き始める。  日増しに膨れ上がる声も無視出来なくなると、政府はひとつの対策を講じる事とした。人と他を隔てるのではなく、人の人権と尊厳を確保する為、情報を操作する組織……Skinfaxiの設立である。
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