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おっさんがバンと勢いよくカウンターを叩いた。その音に並んでいた女性のお客さんが「ひっ!」と悲鳴を上げ身を竦ませた。あー、もう!これは警察呼ぶか?いや、でも呼んだとしてこれ何罪に問えるんだ?知らん、知らん。それよりこの騒ぎを収めるのが先決だ。このままクソ野郎に任せていたら余計に事態はひどくなる一方である。
そう思いあたしが携帯を制服のポケットから引っ張り出した時、視線を感じた。
そちらを見るとクソ野郎がそっと人差し指を口に当てているところであった。『ここはぼくに任せて』と言う意味だろう。そのやたらと様になっている仕草が非常に腹立たしい。
『ちゃんと収められるんでしょうね!?』
とあたしが声を出さずに口パクだけで伝えるとクソ野郎は頷いて見せた。世界で一番信用できない『もちろん』である。
「おい、何コソコソやってるんだ?あんまり客を舐めんじゃねぇぞ!店員如きが!」
「そうですね、神様であらせられるお客様からしたらぼくたち店員なんて取るに足らない存在、ですよね」
おー、おー、煽りよるなこの男。
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