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「流星アプリ……これ、なに?」ことはにスマホを返し、聞き返す。
「使うのはカメラだけ? 個人情報とか、余計に抜かれてないよね?」なほが辛辣な言葉を返しつつ、眉をつり上げた。
ことは曰く、たまたま落としたアプリにしたがって、流れ星に願い事をしたら、それが叶ったのだそうだ。
そんなわけがあるものかと見せてもらったのは、何の変哲もないというか、飾りっけのない、流星アプリとタイトルされたアプリだった。
カメラと連携したアプリをとおして空を映すと、数値が表示される。
この数値が、願い事を叶えてくれる流れ星が流れる確率ということらしい。
「今はゼロだね」
「まあ、昼間だし」
「それで? 百パーセントかつ本当に流れ星が流れたら、願い事が叶うってこと?」
「うん、前回は八十六だったから百じゃないけど。上手くいった時は願いが叶えられましたって出るんだよ」
「えー、どうなのそれ。なんか雑」
「あはは、わかりやすくていいじゃん。それで、自販機でアタリが出ますようにって願ったわけ?」
「どこまで叶うか実験してたの。叶うの三回目だよ、すごくない?」
ことはも最初は信じておらず、流れ星が見つかるといいな、くらいの気持ちだったらしい。
数値が高い時は実際に流れ星を見つけられる確率も上がり、せっかくだからと小さな願い事をしてみたところ、見事に叶ったというわけだ。
「他にはどんなのが叶ったの?」
「ガチャで推しが出ますように。自販機でアタリが出ますように。それと、まあ……バイト先の嫌な人が辞めますように、とか」
「うわ、最後の闇が深い。それも叶ったの?」
少し言いにくそうに「……叶っちゃった」とことはがうつむく。
「ふうん。私も入れてみようかな」
「なほってそういうの信じないタイプだと思ってた。何をお願いするの?」
「ん? 世界が消えてなくなりますように」
「いやいやちょっと」
「冗談だって」
口の端だけで笑ったなほは、本気なのか冗談なのかわからない。
「はやせも入れとこうよ。ほら、願い事は必ず叶いますのでご注意くださいだって。わけわかんなくて面白そうだよ」
「怪しすぎ。まあいいけど、流れ星見たいし。流星群とかすごい見つけられそうじゃない?」
「ああ、もうちょっとしたらあるよね。なんだっけ」
なほの一言で、三人それぞれに検索を試みる。
「これかな、ペルセウス座。お盆くらいに一番見えるって」
「夏休みだね。じゃあこれ三人で見ない? 都内でも……まあ場所選べば見られそう。あーでもはやせ、帰省するっけ?」
「今年はパス、こっちにいるよ」
そう、じゃあ決まりね。
嬉しそうにも、そうでもなさそうにも見える調子で、なほが言った。
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