夜空の星を私にくれたら

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「どうかこの私と結婚してくれませんか」  山あいの村の小さな農家の一人娘が、ピカピカの車に乗ってやって来た紳士にプロポーズを受けたのは、流星群の夜の日だった。  草が臭い発つ小高い丘の上では、降り注ぐ星以外には何も邪魔するものはない。 「恋の女神の涙をすべてあなたに」  ひざまずかれ、そっと右手の甲に口づけられた。  なんともロマンチックな光景である。  けれども、当のノナはつれないもので、 「お断り」  とぷいっと手を振り上げて、家へ帰ってしまった。 呆然とたたずむ紳士だけが、その場に残された。
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