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それから数日、私は彼と会うことはなかった。
シフトの兼ね合いでバイトに入ることができなかったのだ。
久しぶりに私がバイトに来たのは、それから4日後の水曜日だった。
「え!? ブラックチェリーパフェ終わっちゃったんですか!?」
「ああ、あれ期間限定だからね。ほら、一昨日から7月でしょ? もう夏のメニューに移行したんだよ」
厨房スタッフからメニュー変更を知らされた私は驚きの声を上げた。
そうだったのか……。
じゃあブラックチェリーパフェがお気に入りだった彼はもう来ないかもしれない。
「ちなみに夏のデザートメニューは何ですか?」
「すいかパンナコッタ」
ああ無理だ。
ブラックチェリーパフェが好きな彼に、すいかパンナコッタは刺さる気がしない。
彼はもう来ないのかな。
それは少し残念だった。いや、かなり残念だった。
あのアクシデントをきっかけに、今日は少しだけ話しかけてみようかなと思ってたのに。
当日は彼の笑顔に心臓が鳴りやまず、目を見ることすらできなかったから。
……もう一回、会いたかったな。
肩を落としたその時だった。
ピンポーン!
不意に聞こえた呼び出し音に私は時計を見る。
もうすぐ、午後3時。
モニターに映る番号を見て反射的に上がった口角を、私は慌てて隠した。
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