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ピンポーン!
その音を聞いた私は反射的に番号モニターに目をやった。
音を理解するよりも先に身体が動いてしまった自分に気付き、ああ教育されてるな、と実感する。
黒いモニターに映った赤色の番号は『23』。時刻は午後3時。
――きっと、あのお客様だ。
「オーダーいってきます」
厨房にそう言うと「あいよー」と雑な返事が返ってくる。私は注文シートを持って『23』テーブルに向かった。
そこには案の定、彼がいた。
白Tシャツにジーンズというシンプルな恰好で黒いノートパソコンを広げている。
髪の毛はボサボサだが、その奥の瞳は綺麗だった。
「ご注文はお決まりですか?」
「このブラックチェリーパフェとコーヒーを1つお願いします」
その注文は予想通りだった。
彼はいつも春限定ブラックチェリーパフェとコーヒーを頼む。
「コーヒーに砂糖とミルクはご利用ですか?」
「じゃあ砂糖2つとミルクを1つください」
「かしこまりました。少々お待ちください」
私は注文シートに書き慣れたオーダーを記入して、小さくお辞儀をしてから厨房に戻った。
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