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イタリアンレストラン&カフェ『Reisaziya -レイサジヤ-』。
私はここでホールスタッフのアルバイトを始めてもうすぐ2年になる。
仕事自体はもう手慣れたもので、ホールに関しての業務はほとんど全て一人でこなせるようになっていた。
メニューも全て憶えていたし、期間限定メニューにも即座に対応できる余裕もあったので店長からも信頼されていた。
彼に気付いたのは5月頃だったと思う。
この店は午前10時に開店し、ランチタイムに1度目のピークが来て、それからディナータイムに2度目のピークが来る。
ランチからディナーの間は比較的客数が少なく、バイトにとっては少し余裕のできる時間帯だ。
注文も落ち着いた午後3時。
壁際の『23』テーブルに座り、彼はパフェを食べながらノートパソコンを叩いていた。
そういえば昨日もこの景色を見た気がする。
謎のデジャブ感を感じたまま、私はその日のバイトを終えた。
そして次の日のバイトで私はまた同じ光景を目撃した。
まさか、と思い、私は厨房のスタッフに訊いてみる。
「ねえあのお客さん、もしかして昨日もいた?」
「ああ『23』の? うん、毎日来てくれてるみたいだよ」
「毎日? パフェ食べに?」
「うん、すごくお気に入りみたいだね」
それから1ヶ月の間、彼は午後3時頃になると毎日現れた。
そして毎日『23』テーブルに座って、ブラックチェリーパフェとコーヒーを頼んだ。砂糖は2つ、ミルクは1つ。
昼間のシフトに多く入っていた私は、彼のオーダーはすっかり憶えてしまった。
そしていつの間にか彼が来るのを少し楽しみにしている私もいた。
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