初めまして、私

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『こんにちは、私』  私がこのノートを見たのは初めてだ。  ピンク色で水玉模様が可愛い。  でも、中身の内容は残酷だった。 『私の記憶は五分しか持たない。そして五分経つと新しい私が生まれる』  何を言ってるのだろうか?  と思ったが、数分前の記憶がない。  ここが自分の部屋であることは分かる。  文字も時計の見る方法も分かる。  だけど、私が数分前に何をしていたのかは分からない。 『時間はもうない。今の私はもう消える』  ただの馬鹿馬鹿しい予言か。  それとも冗談か。  そう書かれていた。  私がノートを見てから約三分が経った。  昔の私が言っていることが正しいのならば、残り時間は約二分。  正直、信用できない。  これでは私は一時間に十二回。  一日に二百八十八回も生まれ変わってることになる。  有り得ないし、これでは生活もままならない。  それにしても、私はどうやって生きているんだろうか?  だが、考えている時間などないので、最後に私はノートに私の思いを書くことにした。 「よし、これから生まれてくる私たち! その謎を解いてよ!」  そう口走った瞬間、2020年5月5日(火曜日)午後五時から五時五分を生きた私は死んだ。                🕔 『こんにちは、私』 「何だよ、このノート」  思わず口から言葉がもれる私。  中を確認して内容は理解した。  でも、確認するだけで時間は過ぎ、もう残された時間少ない。  普通の人間の五分は長いかもしれない。  だが、私、否、私たちにとっての五分は一瞬と等しいほど短い。  はぁ……私は五分しか生きられないのか。  五分とは短い。命とは短い。記憶とは存在しない。  だが、運命には逆らえない。  だから、この五分は次の五分を生きる私のために使う。  それが私が今やるべきこと。 「よし、書くか!」  そう気合いを入れて、ノートに文字を書いていく。  前の私が書いた一文。  この一文を次の五分間を生きる私に繋げなければならない。  で、その一文とは……。 『私、否、私たちの存在とは何なんだろう?』
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