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屋敷に辿り着き、慣れた調子で門を潜り玄関へと向かう。
そのまま誰に断ることも無く、玄関の扉を開けた。
軋む木の扉がゆっくり開くと、鼻をつく悪臭が漂ってくる。
慣れたと思っていたが、まだまだこの臭いとは付き合えそうにない。
エントランスホール、綺麗な装飾が並ぶこの広い場所のど真ん中に目的の人物がいた。
椅子に座り、優雅に飲み物を飲んでいる少女。
「やぁ、リーリエ」
「おや、アトリじゃないか。来るならアトリに珈琲を入れて貰えば良かったかな」
「今からでも淹れようか?おかわりはいるだろ?」
買い込んだ食料を握りしめ、屋内へと歩みを進める。
ベチャリと足に纏わりつく音も、あまり気にしなくなってきた。
彼女の周りに倒れ込む無数の死体だって、気にしていたらキリが無い。
「今日はどうしたの……」
「逃げたいと言ったから、残った全員のメイドの首を切ってやった。もう屋敷には、殆ど人は残ってないわ」
囲まれた死体の中で、珈琲を嗜むリーリエ。
殺しておくべきだった、アトリの胸中も空しく悪魔令嬢の日常が今日も始まる。
「とびっきり苦い珈琲をいただくわ」
返り血を浴びた顔は、もはや悪魔そのものに成り果てていた。
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