疑惑の御令嬢

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ご飯を食べ終えて手を合わせてご馳走様と言った後、食器の乗ったトレイを手渡してくる。 呆然としたままそれを受け取ると、アトリにまた満面の笑みが戻った。 「やってる事は酷いけどさ、俺には殺すほどの人には見えなかったよ。もしよかったらだけど、ムササビを探すのを俺も手伝うからさ」 その言葉が胸を締め付け、無意識に涙が流れる。 誓った意志がどんどん崩れ始め、冷酷に徹していた心が解けていく。 涙が止まらずどうしていいかわからなくなってきた時、部屋の外の方からヴェルシュの声が聞こえた。 扉を開けられ、目の前の事態に明らかに勘違いした様子だ。 「リーリエ様!?」 ヴェルシュは駆け寄ってくるなり、アトリに今にも殴りかかりそうな勢いで向かっていくが、寸前の所で阻止される。 必死になって裾を引っ張り、だが顔を上げず涙は隠し続けた。 「大丈夫だから、これはアタシが勝手に泣いてるだけだから!!」 「ですがリーリエ様、やはりこの人物は危ないのでは……」 「いいから!!出ますよ!!」 半ば強引にヴェルシュを連れ出そうとする最中、後ろから小声でアトリが話しかけてくる。 微かに聞こえたその言葉に大きく息をのむも、バレないように振り向く事も無く部屋を去った。 ―――――訊きたい事がある、夜にもう1度会えないか?―――――
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