7人が本棚に入れています
本棚に追加
ご飯を食べ終えて手を合わせてご馳走様と言った後、食器の乗ったトレイを手渡してくる。
呆然としたままそれを受け取ると、アトリにまた満面の笑みが戻った。
「やってる事は酷いけどさ、俺には殺すほどの人には見えなかったよ。もしよかったらだけど、ムササビを探すのを俺も手伝うからさ」
その言葉が胸を締め付け、無意識に涙が流れる。
誓った意志がどんどん崩れ始め、冷酷に徹していた心が解けていく。
涙が止まらずどうしていいかわからなくなってきた時、部屋の外の方からヴェルシュの声が聞こえた。
扉を開けられ、目の前の事態に明らかに勘違いした様子だ。
「リーリエ様!?」
ヴェルシュは駆け寄ってくるなり、アトリに今にも殴りかかりそうな勢いで向かっていくが、寸前の所で阻止される。
必死になって裾を引っ張り、だが顔を上げず涙は隠し続けた。
「大丈夫だから、これはアタシが勝手に泣いてるだけだから!!」
「ですがリーリエ様、やはりこの人物は危ないのでは……」
「いいから!!出ますよ!!」
半ば強引にヴェルシュを連れ出そうとする最中、後ろから小声でアトリが話しかけてくる。
微かに聞こえたその言葉に大きく息をのむも、バレないように振り向く事も無く部屋を去った。
―――――訊きたい事がある、夜にもう1度会えないか?―――――
最初のコメントを投稿しよう!