疑惑の御令嬢

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その日の夜は、満月が大きく空に輝いている日だった。 外に明かりが少ないこの場所では、月明かりはかなり重宝している。 だからこそ、夜に灯りも持たず屋敷の中を歩くのは容易かった。 殆どのメイドや執事が寝静まり、水滴1つの音もはっきり聞こえそうな廊下を歩き約束の場所へと向かう。 何故会おうと思ったのか、頭ではまだよく理解できていなかったが会わないと後悔しそうな気がしてずっとそわそわしていた。 誰も居ない廊下を歩き、部屋まで辿り着くと鍵を開けてゆっくり部屋に入る。 窓から射し込む月明かりに照らされた、広く真っ白なベッド。 そこに座るアトリの顔は白く照らされ、不思議と綺麗に見えた。 物音に気付いたのか、リーリエと目が合うと小さく笑みをこぼす。 「来てくれないかと思った」 「その……昼の事で謝りたかった」 ぎこちない様子で部屋にある椅子を手に取り、近くで話せる場所に置いてそのまま腰かけた。 いざ目の前にすると言葉に詰まり目を泳がせていると、アトリが顔を覗き込んでくる。 「大丈夫か?」 「……大丈夫。それより、訊きたい事って何?」 ようやく本題を問いただすと、何故か声を潜めて話し始めた。 「2年間、ムササビが見つかってないんだよね?」 「何でその話……」 「聞けって。そもそも外部の人間を何故断罪しまくってるんだ?」 「それは……」 2年前、あの事件があってから心ここに在らずの状態だったリーリエに復讐心が宿ったキッカケはある一言だった。
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