決断の御令嬢

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決断の御令嬢

ヴェルシュは、他の執事達とは違う1階の個室を使っていた。 物心ついた時からずっと一緒にいる為、それが不自然だとも思わなかった。 階段を下り、真っ直ぐその部屋に向かう。 だが部屋の前に来る直前、不気味な違和感を感じ取る。 いつもは固く閉ざされてる扉が、今日に限って少しだけ開いていたのだ。 隙間から漏れる光が、まるでリーリエを誘っているかの様だ。 ゴクリと唾をのみ込み、罠だと分かっていてもその光に近付く。 全てはヴェルシュへの疑いを晴らすために。 だが扉の前に立った瞬間、漏れていたはずの光が広がりリーリエの全身を包み込む。 眩しくて何が起きたか最初は理解できなかったが、目が慣れると徐々に目の前の状況が把握できた。 大きく開け放たれた扉、そして入口にはヴェルシュが笑顔で立っている。 「こんばんは、リーリエ様」 「あっ……」 隠れて覗こうとしていた事がばれた事で、怯えてる訳では無かった。 目線は、その開けられた扉にかけられていた手。 手袋を取った左手には、見間違える事は無いあの時の紋章が刻まれていた。 瞬時にそれを悟り、思わず腰が抜けて座り込んでしまう。 「どうしたのですか?リーリエ様」 安心できるはずの笑顔が、今はとても歪んで見えた。 伸ばされた手は腰が抜けた少女を立ち上がらせる事無く、そのまま首の方へと伸びてくる。 「んっ……!!」 か細い呻きが口から漏れる。 同時に、首がヴェルシュの手で絞められてる事を理解した。
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